8月が終わり、9月に入る。
まだまだ暑さの残る毎日の中で、変化していくものは季節だけではなかった。

「夕陽、お店辞めること言った?」

「まだ、なかなかお店の事情的に言い出せなくて」

「そっか。もしあれだったら最悪飛んでもいいよ」

「飛んでもって…。そんな無責任な事できないよ」

毎日光からラインと電話がくる。
話し合いは平行線をたどるばかり。それにはやっぱり理由があった。

まず、8月も終わり、宣言通り凜はTHREEを辞めた。

けれども、それが彼女の水商売人生の終わりではなかった。

「色々考えて、さくらとも話して、やっぱりあたしはこの仕事が好きだって改めて思った」

最後に彼女ははっきりとそう言った。

「大樹がすべてではなかったの」とも。

凜は、THREEは辞めた。
でもそれも彼女にとってひとつのステップアップになったのだ。
凜は朝日の提案の双葉に移るということはしなかった。
けれど彼女が選んだ道は、違う街で、クラブに勤めるという選択だった。
凛よりもっと年上の女性が活躍する、大きな繁華街の、有名なクラブだった。敷居はもちろん低くはない。彼女の今までの経歴が認められた証でもある。