「ひかる…あたしはもうだめだよ…、こうやって光に会うとやっぱり光が好きで好きでたまらないんだ。光から離れるなんて無理だよ…。お願いだから…もう離れて行かないで……」

子供のように泣きじゃくるわたしを、光は再び抱きしめた。

「夕陽、あと1ヵ月待てるか?」

「1ヵ月?」

「散々勝手な事をお前にして虫のいい話だってのはわかってる。
でもあと少し、あと少ししたらお前に、南の事も宮沢さんの事も、俺の事も全部話そうと思ってる。信じてほしいんだ…。俺はお前と出会った日から、お前以外の誰かを好きになった事なんかなかった…」

「光の事は信じたい…、でも……」

「もう少ししたらお前は七色グループを辞めろ」

「え?」

「お前がお前なりに七色で果たしたい目標があるのは俺もわかってる…。
自分勝手すぎると思うけど…俺はお前の目標や夢より結局お前自身が大切なんだ。
お前をもう誰にも渡したくない。

夕陽、結婚しよう」

夕陽、結婚しよう。
光ははっきりとそう言った。 それも大真面目な顔で。
頭が全然ついていかない。
でもこの時のわたしは、果たしたかった願いよりも目の前にいる光の方がずっと大切に思えていて、光がいなかったら息さえ出来ないような気がしていたんだ。
光を、1番失いたくなかった。

「わかった…。七色は辞める。光と結婚する…」

光は再びわたしへ深いキスを落とした。

光に抱きしめられた日。これほどの幸せはないと感じた。
けれども、本当に幸せだったのは、光と出会ったばかりの頃で、まだ何も知らずに、大好きだった場所で、大好きだった人たちと笑い合えていたあの頃だったのかもしれない。

幸せはいつだって掴んだと思えば手のひらから擦り落ちていくような
不確かで、目には見えないものばかりだったから。