「ゆい…」

高橋のゆいの名を呼ぶ声。
マンションへ目を向けると、ゆいがちょうどマンションのエントランスから出てきて、すぐに駆け寄っていく男の影があって、それが風間だとすぐにわかった。

向かい合った2人は何やら言い合いをしていて、ゆいの腕が風間に掴まれた瞬間、風間の片方の手に刃物が握られているのが見えた。

高橋や朝日が走り出すより、わたしが走り出す方がずっと早かった。


ゆいと風間の間を割って入った瞬間、肩に鈍い痛みが走った。

「きゃーーー!!」

そう叫ぶ、ゆいの顔だけが見えた。
真っ白のな顔をして、手で口元をおさえて、がくがくと震えていた。

「ゆい、だいじょうぶ?」

そう言った瞬間、自分の右の腕から血がだらだらと流れているのに気が付いた。
真っ赤な、真っ赤な鮮血が、アスファルトにぽたりと落ちていく。
それを見た瞬間、気を失った。

夢を見た。
わたしはまだ17歳で、目の前で笑っている美しい人がいた。
幼いころからよく知っているその人。