それから時は思うよりずっと早く流れた。

光と約束をした1週間はあっという間に迫っていた。

「はるなさん指名です」

はるなはちらっとわたしを見つめふんと勝ち誇ったかのように鼻を鳴らした。
直接何かを言ったり、危害をくわえたりしなかったのは、いくら気に入らなかろうが、わたしの側には常に美優と綾乃がいたからだろう。

「ほんっとはるなむかつく~!!
ねぇ!綾乃何で?!綾乃が頑張っちゃえばはるなの売り上げなんてすぐに抜けるの知ってるんだから~!グループ内では順位低い方かもしれないけどさ…あいつがここではナンバー1って嬢王様ぶってるのがむかつくんだよね~!!」

美優が身を乗り出して、綾乃に抗議をする。

「そういう争いが嫌いなわけでシーズンズにいるんだけど?
それが嫌なら美優が頑張ればいいでしょ?」

美優が身を引っ込め、唇を尖らせ子供のように「意地悪…」とつぶやく。

その時のわたしにははるながナンバー1とかそんな次元ではなく、別の悩みがあった。

「なんかあたしの知らないうちにはるなはさくらを目の敵にしてるしさぁ
さくらは元気ないし…なんかあったああああ?!」

「何かというか…指名が…本指名が返ってこないんだよー!」

それは悲痛な叫び。
この1週間、美優に教えてもらったメイクをし、綾乃にもらったワンピースを着て、褒めてくれるお客さんは増えた。場内指名も増えたし、何人かのお客さんと連絡先も交換した。けれどそれを本指名で返すことは出来ていなかった。