「お前は本当に優しい奴だな…」

朝日がぽつりと呟いた。

「優しい?」

優しいなんて考えもしなかった。
わたしはいつだって自分勝手で、自分の感情だけで動いてきたような気がする。

「ゆいとは勝負してたんだろ。いちおーライバルつーんじゃないの?
そんな女に何があっても放っておけばいいだろ、俺はこの世界に入って、そういう女ばっかり見てきたからな」

「でも…ゆいは友達だから…」

「友達、か…
お前はやっぱり優しい」

暫く車を走らせると、ゆいの住むマンションが見えてきた。
近くの道の横に高橋が使ってるお店の車が横付けされていた。

慌てて車をおりて、高橋の元へ駆け寄っていく。

「高橋くんっ!ゆいは?!」

「全然電話でねぇよ…」

「さくらからの電話なら、出るんじゃないか?」

車を降りた朝日がそう言った。
携帯を取り出して、ゆいに電話を掛けようとした時だった…。