「小林ー、うるせーからゆい送っててくれるぅ?」
「えぇ?!僕がですかぁ、まだ仕事残ってるのにぃ…」
原田と小林の擦り付け合いが始まる。
それに痺れを切らしたのか、高橋が俺が送っていきます、との事でことは収まった。
それでもなおも、ゆいの事が気になってた。
帰宅してすぐだった。高橋から電話がかかってきたのは。
もう家に着いていて、ベランダから街並みを眺めている時だった。
「もしもし?」
「もしもし、さくら悪いなこんな時間に」
「なに?キャバ嬢だからこんな時間でも起きてるよ」
「あのさぁ、俺ゆい送ってったじゃん?
で、しばらくゆいのマンション見てたんだ、風間社長の件もあったしさ
そしたらゆいのマンションうろちょろしてる男がいてさぁ…、でも俺が近づくと逃げていったんだけど…だからゆいに電話したんだけど、あいつだいじょーぶだいじょーぶとか言って…俺がゆいの家に上がり込む事もできねぇし…」
嫌な予感、当たらないでと思う時程当たってしまうものだ。
「高橋くんとりあえずそこにいてくれる?!あたしも何とかしてみるから!」
高橋と電話を切った後、携帯の連絡先をスクロールする。
光、そう思って電話を掛ける手を止める。
1番に思い浮かんだけれど、光に電話なんかしたら、と思って再び手を止めた。



