【完】さつきあめ

ゆいらしくない、不機嫌そうな顔をしてた。

「ゆい、同伴は」

美優が話しかけると、ゆいはめんどくさそうに椅子に座って、愚痴り始めた。

「風間さんと同伴だったんだけど、風間さんの会社倒産しちゃったんだって!それでお金がないって!じゃあ飲みにこれないじゃん!って言ったら、何か結婚してくれって、お店辞めて結婚してくれってあの親父真剣な顔して言ってくるんだよ?!
奥さんと離婚してきたからって!
冗談じゃないよー…。お金持っててもあんな親父と何か結婚する気もないのにー、無一文の男と誰が結婚するかって…真剣に2人で頑張ろうとか勝手にストーリー作っちゃって、こっちははぁって感じなんだけどー…。
とりあえずお金がないなら同伴も出来ないからって言ってお店にきたー。
もぉ、せっかく他の同伴断ったのに、参ったよ~…」

それだけ言うと、携帯を開く。
ゆいは呑気だ。でもわたしは嫌な予感がしてた。

「ゆい、だいじょうぶなの?」

「何が?」

「風間さん…、だいじょうぶなの?」

「だいじょうぶって何が?もぉ風間となんか連絡取らないよー。
連絡先も消しちゃおっと。ほんとなんなのあいつ、むかつくー…」

大丈夫なの?と聞いたのはそういう意味ではなかった。
風間の会社は倒産した。奥さんとも離婚した。
ゆいは何も気にしない様子で、風間の連絡先を消した。
嫌な事が起こる予感がした。