「っ!なんて言っていましたか…?」

「内緒。

って冗談で。
賭けてもいいよ。小笠原さんは…1週間以内に君を指名しにシーズンズに行く」

自信満々でそう公言した光に「まさか…」と返す。

「俺の予想は当たるよ。もしも俺の予想が当たったら、さくら俺のお願いひとつ聞いてくれる?」

「お願い?
別にいいですよ。でももしも社長の予想が外れたらわたしのお願いも聞いてくれますか?」

「いいよ。お願いでも、どんな高級なものでもなんでも買ってあげる」

「だから…そういうところが成金臭いんですって」

2人で顔を見合わせてまた笑う。
そんな話をしている間に車はアパートに到着していた。
見せるのが恥ずかしかったアパートについても光は何にも言わずに、仕事頑張れよ、とだけ言い残し、わたしが部屋に入るのを確認した後に車を走らせた。

その夜、変なことばかり考えていた。

今日はるなに言われたことや、光が言っていた小笠原のことじゃなくて
ずっと光自身のことばかり考えていた。
光は何歳なの?彼女はいるのだろうか?どこに住んでいて、好きな食べ物は何で、どんな風な人生を送ってきて、どんな経路で七色グループの社長になったのだろう。
…会長…朝日とはどんな関係なんだろう…。

そうだ。もしも賭けに勝ったら、光の時間を貰おう。
何を考え、何を愛し、何に傷つき、何を思うのか。
それを知りたい気持ちが、初恋であるとはまだ知らずに。