8月に入って、毎日うだるような暑さが続く。
美容室とエステに行って、外に出ると立ってるだけでも汗が吹き出しそうな気温。

ショーウィンドウの自分を見ると、夏の真っ青な空の下に全く似合わない自分が映し出された。けれどそのすぐ後ろ、わたしの真後ろに立った男の夏の青空の似合わない事と言ったらなかった。

「ふっ」

思わず小さな笑みが漏れてしまうくらい。

「よぉ、相変わらず電話でねぇーなー毎日毎日かけてんだから1回くらいは出てくれてもいだろう」

「ストーカーですか?お客さんなら訴えてるところでした」

振り向いた先に、夏の青空、とはいうよりお昼という時間帯が全く似合わない男。
こんな真夏だというのに、薄いジャケットなんか羽織っちゃって、サングラスの先の瞳は全く見えない。どこにいても夜の匂いが隠し切れない、というよりかは染みついているのかもしれない。
そう思えば、わたしだって他人から見ればそう映るのかもしれないけれど。

「暑いなー…」

「こんな炎天下の下でジャケット羽織ってるからじゃないですか?」

「お茶でも飲むか?」

「ナンパでもしにお昼から活動を?」

「いちいちうっせぇ女だな。
いいからたまには付き合えよ」

半ば強引に近くのカフェへ連れ出される。
コーヒーと紅茶を頼んで、向き合っていても昼の匂いを感じさせない男だ。

サングラスを外した時の、強い瞳は出会った頃と変わっちゃいない。

「ところで、凛から聞いたけど、またゆいと下らない勝負してるって」

ちらりとこちらを見た瞳が、心なしか心配してるようで少しおかしくなる。