「風間さん?確か昨日もゆいと同伴してたよ。
週の半分は必ずゆいと同伴してるはずですよー?本当にご熱心なことで」

その言葉に諸星は少し気まずそうな顔をした。

「ごめんねー、俺あんまり来れなくてー
なんせ仕事が忙しくてさ」

「いやいやそんな嫌味なつもりで言ったわけじゃないんですよ!
わたしに会いたい時に来てくれればいいし、無理してこられてもうれしくないし!」

「俺、さくらちゃん指名で良かったわー…。
なんか風間社長の会社ヤバイって噂聞いててさ」

「会社がやばい?」

諸星が再びソファーに座りドリンクを飲むゆいの姿を目で追った。

「元々あんまり経営の方がうまくいってなかったらしいんだけどさ、風間社長そうとうゆいちゃんに惚れこんじゃってるみたいで…
そんなペースで飲みにこれる状態じゃないと思うんだ。
それに噂だけど…奥さんと離婚するって」

「離婚?!」

離婚って。それって…。
頭の中で桜井の事が思い浮かんだ。
今はもうお店には来ていない、わたしの元指名のお客さん。
わたしも大好きな人だった。
でも、家庭が上手くいってなかった人だった。きっと今にして思えば家庭が上手くいってなかった心の虚しさを、わたしという存在で埋めようとしていたのかもしれない。
でも彼のそんな気持ちを、利用しようとする気には到底なれなかった。
でも今回のゆいの指名客の話は大分事情が違いそうだ。