「またさくらがナンバー1かぁ」

新しくビルに掛けられた看板のセンターを背負っていたのは、わたしだった。

4月も5月もわたしがナンバー1だった。
そして6月も。そして七色グループに入って2回目の夏が来る。

「ねぇねぇ、最近更に凛さんぴりぴりしてる気がしない?
あれぇ、絶対さくらがナンバー1をずっと取ってるからだってぇー。
今までTHREEではずっとナンバー1で女王気どりしてられたのに、それが出来なくなったからぁー」

ゆいは相変わらず。
何も変わらない。
けれどここ数ヵ月わたしがナンバー1なら、ナンバー2は必ずゆいだった。
それもほんのわずかな差で、毎月いつ抜かされるんだろうとひやひやして過ごしていた。
だっていつだってゆいは真剣になったり、しがみついてまでこの仕事に拘りがなかったから。

それとは対称的に、凜はいつだって苦しそうだった。
売り上げが上がらない事に関係しているんじゃないか。
けれどお店の平均をとってみてもTHREEはわたしとゆい。凛だって全系列の中では必ず10番以内には入っていた。個人売り上げだけ見れば、なんら焦る必要もない。
それでも最近の凜はお客さんの前では明るく振舞っていたが、裏ではよく疲れた顔を見せていた。