「あの、じゃああたしそろそろ…」

「ねぇ、いつか小笠原さんとでもいいから双葉に一緒にいらっしゃいよ。
レイも変わったわ…。あの子もあの子なりに苦しんで、自分の仕事について考えていまは頑張ってる」

「…レイさんはいつだって真っ直ぐな人だったから。自分の信じてる事には馬鹿みたいに一直線な人で、あたしもレイさんに会いたいです」

「うふふーあなた聞いた通り本当にキャバ嬢っぽくない!
そこが少しさくらに似てるのかもね。さくらも誰からも好かれるキャバ嬢だったわ。
もしTHREEに飽きたら是非是非双葉に移籍してちょうだいね」

由真の言葉に曖昧な笑顔で答える。

由真のマンションを後にした時はすっかり夜も更けていた。
朝陽が、今日も1日を告げようとする朝陽がまるで希望とも言わんばかりに街を明るく染めていく。
ふと朝日の存在を思い返した。
あんなに夜が似合う男なのに、朝日と名付けられたあの人。

そして深海や綾乃や朝日だけじゃない。
光とも深い関係があったさくらさん。
わたしがさくらという名を選び、深海がそれを了承した。
光がわたしと初めて会って、さくらという名を口にした時、光は一体何を思ったのだろう。

わたしを形作る物がさくらさんに似ているからじゃなく、誰もがさくらという名に拘っていたように今は思える。深海も綾乃も、朝日も光も。
夕陽、と呼ぶ光は、わたしをわたしとしてきちんと見てくれていた日があったにだろうか。
今になり思う。
さくらさんに拘っていたのは、朝日よりも光だったのかもしれない、と。