あのお花見から数日。

THREEの空気は何となく変わっていった。
凛はいつになく頑張っていて、ゆいは相変わらずマイペースだった。
でも何となく凛が空回りしているように見えた。

わたしはお店に早くから来て、高橋とカップラーメンを呑気にすすっている。

「何か店でカップラーメン食ってると深海さんを思い出すなぁ」

「あの人いつもカップラーメン食べてたもんね。
てかこれ辛っ」

流行りの韓国のカップラーメンを買ってみたら、思ってた以上に辛くて、舌がびりびりと痺れた。

「さくら、同伴は?」

高橋の厳しい視線が向けられる。
最近では同伴をほぼ毎日している事が当たり前になっていて、たまに同伴をしない日があると、こうやって高橋にぐちぐち言われる。

「今日は同伴ありませーん」

「ゆいは同伴皆勤だな…」

「もうああなったら才能だと思うよ。ゆいって営業も全然しないし、アフターも行かないし、お酒も飲まないのに…」

「ゆいは、義理とか人情が全然ないな。
自分本位って感じ」

「それなのに、結果が出せてるからゆいはすごいんだよ……」


とてもじゃないけど、ゆいのスタイルで営業をしていたら、わたしは今の成績を維持出来ない。凜もそれはきっとわかっていて、焦っているのだと思う。
圧倒的な才能。わたしたちが必死で走り抜けている間に、すーっと抜かしていってしまう感覚。本人は望んでもいないのに、いつの間にかゴールしちゃう感覚。それをずっとゆいに感じていた。