「綾乃ちゃんって、宮沢さんの事すごく嫌いそうだから」
「別に嫌っちゃいないわよ。我儘で強引で自分が欲しい物は力づくでも手に入れなきゃ気の済まない裸の王様なところはどうかと思うけど、本当に大切に想えばずっと大切にする人だって事もわかるから。物でも人でも」
「ふぅ~ん…」
朝日がもしかしてわたしに本気?そう思うと頭が痛かった。
人間関係がねじれにねじれていく気がしたから。
「光の事は……」
困ったようにそれだけ言いかけて、わたしの顔を覗き込んだ。
言いたい事を言えずに困った顔をする綾乃は、とても光に似てると思う。
「綾乃ちゃんは知ってるよね。光に彼女がいるの」
「知ってたの…」
「だって会いにいったんだもん…。ストーカーかよって自分でも呆れちゃうくらい
彼女が出来ても拒まれても好きなんだもん。光は困っちゃうよね…」
「困りはしないけど、光は辛いかもね…」
「あたし本当はすごく諦めが悪くて、執念深い女なんだと思う。
今だってまだ自分の都合のいいように考えちゃうんだよ。光には何か事情があるんだって…本当は今もあたしを好きでいてくれてるかも…とか。
はは、本当に都合の良い事しか考えたくないもんだね、人間って」
「……」
綾乃は無言だった。
無言のまま、暗く染まる空を見つめていた。
困ってしまうだろう。綾乃はわたしも光も大切だと言った。
光は兄弟だから当たり前だ。板挟みになるのはどんな気持ちだろう。



