気まずい沈黙に耐え切れなくなり、その場を立つ。
立った瞬間、朝日が力強くわたしの手を握りしめた。
下からわたしの顔を見つめる朝日の顔は今までに見た事もないくらい真剣だった。
「俺、ゆりとは別れるよ」
そして口から出た言葉は意外な物だった。
「いい加減に遊んでた女とも全部切った。ゆりとも別れる」
朝日の手から伝わる熱が、自分の体にも伝わっていく。
こんな真剣な表情をする人だったなんて…。
「そ…んな勝手な事言わないでください…。
ゆりさんと別れたって、他の女と切ったって、あたしはあなたの事は好きになれない…。絶対にならない…」
わたしの手を握る、朝日の力が段々と強くなっていく。
「お前も、有明に他に女がいても、誰とヤッてたって有明の事が好きなまんまだろ。
俺が他の女と切って、ゆりと別れてお前を好きなままでいたってそりゃお前のやってる事と同じ事だろう」
「…困りますっ」
「じゃあ有明も同じように困ってるなぁ?」
わたしたちは、2人して同じ事をしてるって言いたいのだろうか。
わたしが朝日の気持ちに困ってるように、光も困ってると言いたいのだろうか。
「勝手にあたしが光の事を想うのはあたしの自由でしょう?」
「じゃあ俺が勝手にお前を想うことも自由だ」



