【完】さつきあめ


「ほんとーお前むかつくわぁ」

「宮沢さんのドストライクの女の子に当てはまらなくて本当に光栄ですっ!」

思いっきり嫌味で言ってやったから、てっきり朝日はしかめ面をすると思ったけど、大きく広がる空に向かって、口を大きく開けて笑った。
屈託のない笑顔だと思った。この人のそういう一面をいつも見ないように、この人の前ではいつも頑なだった自分がどこかにいた事に気づく。

「本当にお前はいちいちむかつく女だな。

まぁ俺は気が強くて、きつい顔の女が好きなんだけど、てかそれ以外の要素であんまり女を見た事がなかったんだけど、この間焼肉屋でお前の好きなところを1つはっきり確認したんだ」

「好きなところ?」

「お前がうさぎのぬいぐるみを見て笑った時、くしゃって顔したんだ。
あぁ、俺って笑うとくしゃってなる女が好きなんだなーって初めて思った」

それは昔からのわたしのコンプレックスでもあった。
笑うと顔がくしゃってなる。この笑顔があまり好きではなかった。わたしが自分で嫌いなところを、この人ははっきりと好きだと言った。

「くしゃっと笑う人なんてごまんといますし、あなたがあたしを好きだと思うのも気まぐれです。ただの気の迷いです」

「じゃあお前が有明を好きなのだって気まぐれで、気の迷いかもしれないだろ」

「ちがっ!」

「人の想いは否定するくせに、自分の想いが否定されるのは嫌か」

そう言われてハッと気づく。
朝日の言っている事はド正論で、わたしって身勝手だ。
それをこの人に気づかされるなんて、心外だけど。

でもゆりと付き合いながら、わたしを好きだと言う方がずっと身勝手だと思うのだけど。