「待ってなんかいませんよ」
嘘だ。
わたしはいつだって待っていた。
待たないと心に決めた日も
人々が忙しなく流れていく駅のホームでも
人並みに飲み込まれそうになる街の片隅でも
信号の待ち時間も、同伴で行ったお店でも、仕事帰りのコンビニでも
どこかで偶然でも会える事を毎日願い、待っていた。それがいくら無駄だと知っていても。
「ふぅ~ん」
朝日は煙草に火をつけて、ふぅーと空に向かって吐き出した。
わたしは空いた酎ハイの缶を朝日に差し出した。
「何?」
「煙草ポイ捨てなんてイメージ通りだから止めてくださいね。ただでさえ幻滅してるのに、もっと幻滅しちゃう」
ははっと笑いながら、煙草の灰を酎ハイの缶の中に落とす。
「俺さ、気の強い女が好きなんだよね」
「はぁ。あたしは実は気弱なヘタレなんで、宮沢さんの好きなタイプじゃなくて良かったです」
「ちっ」
わざと大げさに舌打ちをする。
「見た目も、きつそうな女が好きなんだ」
「全然聞いてないですけど。
わたしはどちらかと言うとふんわりとした女の子らしいイメージなので、本当に宮沢さんのタイプに当てはまらなくて今安心してます」
なんて、ふんわりもしてないし、全然女の子らしいイメージもないって言われるけど。
ふんわりとして女の子らしいのは美優やゆいみたいな女の子だ。



