【完】さつきあめ


ゆいはわたしの姿を見つけると「さくらー」と人懐っこい笑顔で駆け寄ってきた。つられてわたしも笑う。
光とゆいがセフレ。朝日があの日言っていた言葉。
それがいつからなのか、そしていつまで続いていたかなんか知らない。
それでもわたしはゆいを嫌いにはなれなかった。屈託のない笑顔をわたしに向け続けるゆいに対しては。

ゆいはわたしの腕を掴んで、少し人から離れた場所まで移動した。

「会長さー、さくらの事ばかり聞いてきたよっ!」

「へぇ~…」

「へぇ~って全く興味ないのね!」

「はい。全然興味なし」

「会長可哀そうだなー。あんなんめっちゃ一途そうじゃんー」

「宮沢さんが一途?!ゆりさんって彼女がいるのに?!」

「一途だよー。ありゃ、ゆりさんと別れるのも時間の問題かもねー。
大体ゆりさんのがずっと会長を好きだったらしいよ。それで元カノから略奪したって噂」

「知ってる…」

知ってる。
わたしは知ってるんだ。
朝日にゆりと付き合う前に彼女がいた事も
ゆりがその人から朝日を奪った事も
わたしはずっとずっと知ってた。