「じゃあ、2人ともゆっくりしていってね」

「さくら!」

綾乃がわたしの名を呼び、足を止める。
後ろを振り返り、視線だけ綾乃へ合わせる。

「さくら…何か変わったね?」

綾乃の言葉に微笑みをかけて、違う卓へと移動する。


開けれるだけのシャンパンを開けて、飲めるだけ飲んで
営業終了後、プレゼントの山と、お花に包まれてフロアーの中央のソファーに横になっていた。

「さくらー…さくらってばぁ…」

「起きやしないわよ、放っておきなさい。今日の主役なんだから。
随分頑張ったじゃないの」

「さくら本当にすご~い!!」

夢か現実かの境の中で、ゆいと凛と美優の声がした気がした。
それでもわたしの目が開く事はなかった。

この誕生日を迎えるまで、わたしは相当努力したと自画自賛できるほど頑張っていたと思う。バースデー当日まででもTHREEの売り上げはわたしが圧倒的な1番で、今日の売り上げも過去最高だと、仕事中に計算した。
見栄とプライドを守るためにわたしの名前が書かれたお花を沢山贈ってもらった。今までに貰ったことのない数のプレゼントも貰った。
わたしは、わたしの中にあるちっぽけなプライドを全力で守った。
高級なプレゼントと花に埋もれ、昔話のお姫様のようなドレスを着て自分を飾り、見たこともないようなお金を手にした。