「ハッピーバースデー!」

どこからかしこの卓からシャンパンの抜かれる音がする。

情熱の赤をコンセプトとしたお店のフロアに真っ白い花がずらりと並ぶ。
お花をプレゼントされるのなら、白がいいと言ったらこぞって皆白い花を贈った。
赤と白って合うんだなぁってその光景を見て、改めて考える。

赤で統一されたフロアを、白いロングドレスを着て練り歩くわたしを絵になると人々は称賛した。

ゆっくりと、ひとつひとつの卓を見つめるようにフロアを歩く、わたしが主役の日。

「さくらちゃん、誕生日おめでとう!」

人生でこんなにも沢山の人におめでとうを貰う事はあっただろうか。

開けられていく高級なボトルの音と、むせかえるような花の匂い。
わたしはTHREEで19歳になる年を迎えていた。

「さくらおめでとうー!いえーい!あたしがシャンパン一気ぃ~!」

シーズンズから、はるなと綾乃がお客さんを連れてお店にやってきてくれた。

「ありがとう、ふたりとも…」

もちろん誕生日だから、ほとんどの席がわたしのお客さんで埋められている。
その中で黒服たちが忙しそうに動く。
2人の卓についてわずか、高橋がさっそくわたしを抜きにきた。
今日はろくにお客さんと会話もままならないようだ。
もちろん大半のお客さんはそれを承知で、わざわざ誕生日に足を運んできてくれている。

わたしの見栄や、プライドのため。