「THREEの店長は深海さんよりセンスあるみたいね」

「あぁ小林さんな」

「すっごく苦手だけど!毎日さくらちゃん綺麗~ドレスすごく似合ってる~髪形いい感じ~とかいちいち言う事が嘘くさいし!」

「あぁ…あの人は女の子を良い気分にさせるのが上手い人だからな」

「あんな見え透いたお世辞、鳥肌が立つだけだっての!」

「元気そうだな…」

深海が安心したように小さく微笑む。

「まぁね…、THREEに入ってすぐにバースデーだし、撮影とかも忙しくて色々な事考える暇もないって感じ。環境が変わって、人間関係も一気に変わっちゃったしね」

「元気なら、良かった。
さくらなら絶対バースデー成功するよ。
じゃあな」

そう言い残し、人ごみの中に消えていく深海の背中に、思わず名前を呼んでしまう。

「深海さん!」

こちらへ振り返り、少しだけ首を傾げる。

「光は…、光は元気…?」

「有明さんは相変わらずだよ。
でもまぁ、俺には少し元気がなく見えるかな?でも大丈夫」

会いたくて会いたくて、考えない日はなかった。
会えそうな場所に行ったり、行きそうな道を通って、かつて一緒に歩いた場所を通ると胸が締め付けられそうになって、何度も何度も繰り返す。
近くにいて会えないのは、遠くにいて会えない事よりもっと切ない物だということを初めて知る。