「はーい、じゃあ、こっち見てー
あ、その表情いいねぇ~、もう1枚!」

3月の初め、大掛かりな撮影が行われた。
珍しくロングの白いドレスを着て、カメラの前に立つ。
カメラマンさんは「花嫁さんみたいだね」と言った、白いドレスは普段は着ないであろう代物だったが、かなり値が張った。

撮影が終わって、すぐに大きなポスターが制作される。
3月でわたしは19歳になる。建前上21歳のバースデーという形になるのだが。お店では大掛かりな準備に追われていた。
顔のドアップと全身の写真は、お店でバースデー期間飾られるらしく、思ったより大きいそのポスターの中にある自分の微笑みに思わずドン引きしてしまった。
ポーズを決めている写真の中の自分は、いつだって変な感じがした。

バースデーイベントなんて事で、高橋や店長、そして部長の原田から大きなプレッシャーをかけられていた。
オリジナルシャンパンの試作品、と持ってこられた瓶にはわたしの写真が印刷されていて、変な気分になる。

「さくらー!」

仕事前に、ゆいとカフェで待ち合わせをしていた。
わたしは手帳を見つめながら、ミルクティーをすする。
ゆいにはすっかりなつかれたようで、お店に行く前にお茶をしたり、仕事帰りにカラオケをしたりしていた。

「何、怖い顔して手帳覗き込んでるのー?
あ、あたしもあったかいミルクティーと、うーん、このパンケーキ下さい。バナナとチョコのやつ」

「今日も同伴じゃないの?」

「うん。同伴ー。でも美味しいそうなもの目の前にあると我慢出来なくなっちゃうー!」