【完】さつきあめ

「さくら、今からセット?!」

「う、うん。ゆいちゃんも?」

「うん!
てかゆいって呼び捨てでいいよー!店長から聞いたんだけど、さくらって20歳なんでしょ?あたしと同い年なんだー」

「あ、うん。ゆい、ね。
ゆいも20歳なんだ!」

なんて、本当は18歳だけど。お店では20歳の設定だ。
まぁ年齢も名前も偽るのが当たり前の世界だから、皆何も言わないし、詳しくは聞いてこない。

「あははー何かさくら挙動不審でウケるー!
ねぇねぇ一緒にセットいこー!」

「いいよ。でもその前に昨日の売り上げ表見せてね」

お嬢様風で可愛らしい。
でも物事を物怖じせずにはっきりと言う。
可愛いのに自然体で、人の懐にふわりと入って来てしまう。この子が人気がある理由がほんの少しわかったような気がする。

「えー?!売り上げを毎日チェックしてるのー?さくらって真面目だねぇー」

「真面目っていうかそういう気質っていうか…」

わたしの後ろでふぁーと大きなあくびをして煙草をふかす。
THREEの昨日の売上表を見て、びっくりした。
ゆいの指名数がとても多い。先月の全体の売り上げを見ても、売り上げだけならわたしが勝っている。もちろん、凛の方が売り上げもある。
けれど、指名数だけで見れば、系列のナンバー1のゆりに続いて多い。
全然そんな風に見えないのに、すごい子なんだなって思った。