「でも別に何もないと思うわよ?今より良い時給になるって言うから入店したって言ってたし…。それにその子、男で動くようなタイプじゃないんでしょ?」
「確かに……」
自分を強く持っている子なのだと思った。
わたしみたいに揺れたりしないし、男の事で仕事に支障をきたすタイプには見えなかった。
しかし、ゆいのようなタイプのキャバ嬢は初めてだった。
少しだけ彼女に興味がわいて、どんな接客をするのか明日見てみようと思った。
「おはよーございまーす…」
「あ!さくらおはよう!」
シーズンズの時と同じ。
誰よりも早くお店に行って、売り上げをチェックする。その習性は変わらなかった。
意外だったのはわたしより先に、ゆいがお店に来ていた事だった。
「あ、さくらちゃんおはよう~!
さくらちゃん聞いてよ~ゆいちゃんに困ってるんだ~…」
小林も来ていて、困ったようにわたしの方に駆け寄ってきた。
「セットに入りたくないなんていうんだよ~…」
「だってーあたしのお客さんそういうの気にしないんだもん。
ゆいは自然体でいるのが1番可愛いよって言ってくれるしー
何よりセットに入るために早く出勤するのも嫌!寝てたいのに~…。」
「でも会社の規定だからね」
ぷーっと頬を膨らませるゆいに、小林は困ったようになだめる。
すぐにゆいはわたしの方へ振り返り、目をキラキラさせる。



