「お客さんも待たせちゃってるし、軽く自己紹介ね。店長の小林さん。副店長は聞いてると思うけど、さくらの担当の高橋くんね!」

「さくらちゃん、よろしくね。小林です」

小林は落ち着いた雰囲気の30代くらいの男性だった。
小林の後ろで、高橋が口をへの字に曲げてわたしを見つめ、大きく拳を前に突き出した。

わたしも小さく拳を返し、急いで更衣室に向かう。慌てて着替えて指名の卓に行くと驚くサプライズが待っていた。

「美優ちゃん?!」

「やっぽー!」

「さくらちゃん遅刻ー?!珍しいね。あっ!今日髪ストレートだ。可愛い」

安井の席で、何故か美優がヘルプに着いてる。

「何で?!」

「2月から、THREEに移動願いを深海さんに出してたのっ!
戻ってきたくなんかなかったけど~。女の子超怖いし~。でもさくらにはスーパーヘルプの美優ちんがいなきゃダメでしょ~?」

そう言って無邪気に笑う美優に、涙が出そうになった。

「ありがとう…。深海さんもよく許してくれたね…」

「へへ。結構きつかったんだからぁ~!
でも高橋くんにもお礼言っときなね。高橋くんが強くあたしの移動推してくれたから、来れたのもあるの~!」

ちらりと視線を移すと、涼しい顔をして高橋がドリンクを運んでいた。
電話では厳しい事を沢山言ったくせに…わたしの為に、そう思うと、やっぱり涙が出そうだった。