「ごめんね、夕陽」

その言葉を聞いて、初めて光の前で涙を流した。
悲しい日だって、嬉しい日だって、わたしは誰の前でも泣かなかった。
いつかの高橋に言われた言葉を思い出し、わたしは頑なにこの仕事をしていく上で人前で涙を流したりしないという自分との誓いを守り続けてきたのだ。

けれど何故、いま、自分の頬から流れる涙を止めることが出来ない。
止まれ、止まれ、止まれ、何度も言い聞かせても、全然止まってはくれなく、自然に瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

光の言う、ごめん、って言葉が大嫌いだった。

「なんで勝手に引っ越ししたりするの…。
なんで色々な事、全部あたしに話してくれないの…?
今日綾乃ちゃんと話して、光の妹だって聞いた…。光が宮沢さんに縛られて生きてる事も…なんで光はいっつも苦しい事を自分の中で抱え込むの?
…なんであたしは何も出来ないの?」

自分の中で溢れて止まらない気持ちが、一気に涙と共にこぼれだした。

「夕陽と出会って幸せだった…。
なんかなぁ、俺なんて幸せになる資格なんてないと思ってたのに、お前と一緒にいると俺なんかでも幸せになれるって錯覚しちゃった…」

「幸せになるのになんて、資格なんかいらないんだよ…。
ねぇ、光…あたし七色グループで誰にも何も言わせないくらいの圧倒的なナンバー1になるから…あたしがグループからいなくなったら困るって宮沢さんが思うくらいの…女になるから…そうしたら光を自由にしてあげるから…
だから離れていかないで…
光がいないと…あたし頑張れないの…」

もう涙が溢れて止まらなかった。
力なくし、その場に座り込むわたしを、光は優しく抱きしめた。
抱きしめられて、余計に涙が止まらなくなってしまう。