「それならば、このグループで頑張りなさいよ。あたしは応援する。
ただ…光とさくらの事は応援出来ない。
あなたと光が何もなければ、宮沢さんも何もしてこない。
あたしから言いたい事はそれだけ」

灰皿の中に、綾乃が何本も吸っていた吸い殻がまばらに散らばっていた。
最後に押し付けるように煙草の火を消すと、綾乃は席を立った。
わたしは大きな鉛が背中に乗っているように俯いて、そこから動けない。

立ち上がって、綾乃が途中で足を止める。

「さくらは、ずっとあたしと光の関係を疑ってたね」

「え?」

俯いていた顔を上げると、綾乃は泣きそうな顔で笑っていた。

「色々聞いてるでしょう?あたしと光が付き合ってる噂があるとか、一緒にいる画像が出回ってたり、必要以上に光があたしの心配したり…」

「うん…」

「あのね、この系列だったら昔からいる人とごく一部の人しか知らない事なんだけど
あたしと光は兄妹なの」

「え?!」

人を真っすぐ見据える瞳。
考えている思考。
出会った頃から感じていた2人への違和感。
綾乃から兄妹と聞いた瞬間、すぐ繋がった気がした。


「うちは結構特殊な家庭だから、ずっと周りに秘密にしてたの。誰にも言う気もなかったし、言う必要もなかった…。ずっとさくらが疑問に思ってた事…あたしが光を大切に思う理由は妹だから…。
さくら、本当に今までごめんね」

そう言い残して、綾乃は店を後にした。
今まで2人に対して抱いていた疑念はそこで確かに解消された。
けれど今も分からないままだった。