「こんな事を望んでいたわけじゃなかった…」
そう嘆くように、呟く。
「綾乃ちゃん?」
「さくらはきっと、もうあたしの事を嫌いになったと思う」
「そんな事ないよ…」
「嫌いになってくれて良かったの…。あたしはただ…光とさくらの距離が段々近づいていくこと、それだけが怖かったから」
初めて、本音を話す綾乃が見れた気がする。
いつも綾乃は光の事を有明と呼んでいた。しかし一度感情的になった時に光と呼んだ日があった。ずっと引っかかってた事だ。
「どうして?」
「あたしにとっては、さくらも光も同じくらい大切だったから…」
その言葉はもっと意外だった。
わたしはただ単純に、綾乃は光が好きなのだと思っていたからだ。
そう思っていた綾乃が、目の前でわたしと光、どちらも同じくらい大切だと言う。
それは真剣な眼差しで、到底嘘をついているとは思えなかった。
「何となく、さくらと出会った時から、光はさくらを好きになる予感がしてた。
それでもいいって初めは思ってたの。
でもまさか、さくらまで光を好きになるとは思わなかった…。
そして、あなたは思ってた以上にこの仕事の才能があった…。段々とさくらを見ていくうちに、きっとシーズンズのナンバー1になるんだろうなぁって思い始めた。それをあたしはどうしても止めなきゃいけなかった」
綾乃の言いたい事はいまいち理解出来なかった。
わたしと光がお互いに思い合うことも、わたしがナンバー1になる事も、何故そこまで頑なに綾乃は嫌がるのだろう。
ただ、それは単純に光が好きだというような理由ではない事は、綾乃の話しぶりから想像はついた。



