【完】さつきあめ

「さくら！」

綾乃に引き止められた。

「綾乃ちゃん……」

「ちょっと時間いい？話がある…」

「うん、大丈夫だけど…」

綾乃はいつになく焦った様子を見せた。
わたしたちは皆の輪から外れて、深夜までやってるチェーン店のファーストフード店に入った。
気づけば綾乃とも半年以上同じ時間を過ごしたとふと考える。
仲良くなって、色々な事を教えてもらい、お店で着る服も沢山もらった。最初の頃は美優と３人でよく一緒に飲みに行って、でも何故かナンバー１を争わなくてはいけなくなって、シーズンズで気まずくなる時もあった。光と綾乃の関係を疑う日もあった。

「なんか明日からバタバタしちゃうのに、引き止めてごめんね…」

「うん、大丈夫だよ」

綾乃は煙草に火をつけて、カップに入ったコーヒーを一口飲む。
それに合わせて、わたしも紅茶のカップに口をつける。
朝方の店内はガラガラで、人もまばら。夜の匂いがする住人たちが、ぽつりぽつり席に座っているだけだ。
店員は暇そうにカウンターに立っている。


何となく、気まずい時間が流れる。
綾乃は吸っていた煙草を消したかと思えば、もう１本取り出し、再び火をつけ、やっと重い口を開く。