「どう?」

「ん。可愛い。
美優ってメイクだけはプロ並みよね。まぁさくらの土台がいいってのもあるんだろうけど」

「ちょっと綾乃!メイクだけって!」


高橋と光と別れてから美優と綾乃の待つバーに来たら、そこにはメイク用品を持って待っていた2人がいて、美優は魔法のようにわたしの顔にメイクをほどこして、ひとつひとつポイントを丁寧に説明してくれた。

出来上がり!と言って渡してきた鏡を覗き込む。…そこに移っていたのは…。


「………綺麗」

自分で自分の顔を見て出た言葉。
自分でしていたメイクとは全然違う。メイクのひとつでこんなにも変わるなんて驚いた。あんなに冴えなかった自分が、見違えるように別人に見えるのだから。
透き通った肌も、綺麗にグラデーションになってる瞼も、長く伸びた睫毛も
頬の色と同じピンクで彩られた唇にラメののっているグロスが光る。絶対に自分じゃあこんなメイクをしようとなんて思わなかった。

「そりゃ~綺麗でっしょ~!さくらは自分で自分の武器や魅力がわかってないんだよ~!」

「いや…これは美優ちゃんのメイクの腕がいいだけだよ…。わたし可愛くないもん」

「本当にさくらは自分のことが何にもわかってない」

呆れたような口調で綾乃が言う。うんうん、と隣で同意だとでも言わんばかりに美優が頷く。

「メイクでも限界があるわよ。
さくらの生まれ持った大きな目や通った鼻筋も、真っ白な肌も恵まれてんのよ」

「ね~!ほんとに綺麗で羨ましい!」

「いやいや、美優ちゃんや綾乃ちゃんの方がずっと綺麗だよ!!」


「えー!それってちょ~嫌味!確かに綾乃はクールビューティー系で綺麗だけど~!
あたしなんて地黒なんだよ?!その上アイプチがなかったらすっごい重い一重まぶただし、カラコンもしてなかったら目ぇなんか粒しかないんだからね?!
ほんともぉ嫌だぁ~整形したいよ!」

「そんなことないよ!美優ちゃんすっごく可愛いよ!優しいし、笑った顔もすっごく魅力的だし、こんなに可愛くて性格もいいなんてびっくりしたもん!!あたし久保さんが美優ちゃんのこと指名してる気持ちすっごくわかるもん!男だったら絶対指名してるし!」

「ちょっと…さくら~…照れるんだけど…
あたしめっちゃ告白されてる気分なんですけど~…」

そう言って顔を赤らめる美優のことを本当に可愛いと思う。
顔だけじゃなく、美優を形作る雰囲気全てが可愛いし、魅力的だ。