【完】さつきあめ


「今回の原田が部長になった件だってそうだ。
あの人は自分に従うイエスマンしか近くに置いときたくない。
これ以上宮沢さんに睨まれたら、有明さんはこの系列にはいれないよ」

「いいじゃん!光ならわざわざあの人の下で働けなくても、独立したっていいと思う。
光の方が人望もあるし、深海さんだって光の方についていくでしょ?女の子たちだってきっとそうだよ…」

深海は黙り込む。
何も言わない深海に妙ないら立ちを覚えた。

「この世界ってさ、結局全部繋がってるんだ。
有明さんだって独立したくないわけがないんだよ。
けれど、もしも有明さんが独立でもしようものなら、宮沢さんに潰される…」

「じゃあ結局光は一生あの人の下で働くしかないってこと?」

「複雑な世界なんだよ…。
さくらもTHREEで働けばわかると思うよ」

「…わかりたくなんかないよ」

その夜、光にラインを送った。
けれどどんなに待っても、返信はこなかった。
それから半月、光には全然会えなかった。
大幅な人事異動があったせいか、光は毎日忙しくて、毎日わたしより先に会社に行って、わたしより後に帰ってくる生活が続く。


シーズンズ自体に顔を出すことも少なくなり、その中のわずかなラインでも結局深い話は聞くことは出来なかった。
どうしてこうなったの?聞きたい事は沢山あった。けれどそのたびに深海のあの言葉を脳裏がめぐる。
有明さんの立場が悪くなってもいいのか、と。
それでも同じマンションに暮らしている事だけがわたしを安心させていた。