ニヤリと不敵に笑う。
泊まるというのは、つまりそういう事なのだろうか。
一気に経験のないわたしは恥ずかしくなる。指輪の事はすっかり忘れて、どうしたらいいんだ、とか、どういう風に振舞えば、なんて事ばかり考えていると、光はシャワー浴びるわ、と自分の家のようにお風呂にさっさと行ってしまう。

とりあえずバスタオルを用意して、自分を落ち着かせるために冷蔵庫から水を取り出し一口飲む。

まだ付き合ってない。でも好きな者同士が夜を一緒に向かえるということ。それは勿論そういう事で、お風呂場から聞こえるシャワーの音が生々しく響く。

体さえ繋ぎ止めておけば、一緒にいる未来はまだ繋がっていると思った。そう思ったからこそ覚悟した。

「ふーさっぱり。夕陽も浴びてきたら」

「う、うん!」


お風呂上がりの光の姿はさっきのシャワーの音よりよっぽど生々しかった。
セットされてないサラサラの茶色の髪から滴が落ちて、頬を少し赤く染める。じっと瞳を見つめていたら、考えてる事が読まれてしまいそうで、急いでお風呂場に向かう。

熱いシャワーを頭からかぶり、これから起こる初めての出来事を悶々と考える。
だ、大丈夫かな?
一緒にクリスマスを過ごすといっても、こんな事が起こるなんて予想もしていなかった。
けれど同じマンションに過ごして、毎日一緒に帰ってるから、いつかこんな日が来ることも予想していた。

「うぅ…さっきあんなに食べなければ良かった…」

自分のお腹のお肉を手でつまみ、心の中で独り言。
えーい大丈夫だ、電気を消してしまえばわかるまい。
入念に体を洗い、お風呂場を出た。緊張はピークに達していて、口から心臓が飛び出そうというのはこの事を言うのだろう。

けれどお風呂から出て、ベッドで横になる光を見て唖然とした。