「えー?!これ、まじで夕陽が作ったの?」
次の日、クリスマス。
仕事を終えて先に家に帰って、仕事前に下ごしらえしておいた料理を作った。
今日はあんまり酔っぱらわないように、お店でもお酒を控えめにしていた。
好きな人と過ごすクリスマスに浮かれていた。勿論、昨日の朝日の事があった後だ、100パーセント浮かれた気持ちにはなれないが、目の前の光の顔を見ると、ついつい頬が緩んでしまう。
「びっくり。こんなに料理が出来るとは思わなかったよ」
ローストビーフに、グラタンに、ポテトサラダ。
一応料理は出来るけれど、今回はネットを見たりして何度も味見をした。人の舌というのは味見をすればするほど味がわからなくなってしまうものだということも初めて知った。
光は仕事を終えて、約束通り、ケーキと子供が飲むジュースのシャンパンを持ってきてくれた。箱を開くと、イチゴの沢山乗ってるまんまるのケーキ。子供みたいにはしゃいでいた。
「美味しい!」
「ほんと?!」
「うんうん、こんなに美味しい料理初めて!家庭の料理って感じ!」
「お母さんの味にはきっと負けるけどね」
光は本当に嬉しそうに料理を食べてくれたけれど、お母さんという単語を出した瞬間、表情が曇った。
「母親の料理食った事ねぇ」
「え?」
「てかうちの母親料理なんてしない人だし、うちにはいつも家政婦のおばちゃんがいたから、っても、家政婦のおばちゃんが作ってくれるのって家庭の料理って感じでもなかったしな」
それは光が初めて話してくれた自分の事だったかもしれない。
「そうだったんだ…。うちはいっつもお母さんが作ってくれてたから、それが当たり前だと思ってたよ…」
「いや、普通はそうなんだろーなー、俺んちが異常ってか、変なんだろうなぁ。夕陽は一人っ子?」
「うん、一人っ子。
でもおねぇちゃんみたいな存在の人がいたから、一人っ子でも何も寂しくなかったよ」



