「いらねぇよ、それはもうお前にやったもんだ、いらねぇなら売るなり捨てるなり好きにしろ…。
そんな事より、お前はそんなに有明がいいのかよ…」
もうはっきり伝えておこうと思った。
こうやって、わたしに誰かを重ねて見られるのも嫌だし、わたしは朝日だけはこの先何があっても好きになる事はない。
このまま中途半端な事をしていたら駄目だ。
「あたしは、光の事が好きです」
「はっ!!!」
電話口で、馬鹿にするように笑う。
「残念だな、あいつはお前だけは好きにならない」
「そんな事ないです…。光は今は付き合えないって言ったけど、あたしの事好きだって言ってくれました。宮沢さんは色管理って言うかもしれないですけど、あたしは色管理でも、何でも好きだから光の事待っていたいんです…。だからあたしにもう構うのは止めてください…」
「………」
電話口、しーんとなり朝日が黙り込む。
電話では朝日の表情は見えない。
だから今、何を考えているのかもわからない。
暫くした後、掠れた朝日の声が小さく聞こえてきた。
「…色管理、じゃねぇよ…」
「え?」
「それは有明が本気でさくらを好きって事だな。
ははは、面白いな」
何で笑っているのか、何が面白いのかさっぱりわからなかった。
それでも朝日は電話口で笑い続けた。
冬なのに、嫌な汗がつたう。
わたしは何か、言ってはいけない事を言ってしまったのかもしれない。
朝日の地雷を踏んでしまったのかもしれない。
でも、もう時は既に遅かった。
「さくらに見せてやるよ。俺と有明の違いを
あいつと俺の格の違いってやつをな!」
「え?!」
「年明け楽しみにしてろよ…」
それだけ言い残して、朝日は一方的に電話を切った。
何かとてつもなく、嫌な事が起こる予感がしていた。
わたしはまだ、この人の中にある心の闇を深くまで理解していなかった。



