「メリークリスマスー」
皆の輪からすぐに離れて、何となく気持ちも乗らなくて、家に帰ってきてしまった。
ベランダから見える風景は、クリスマスのイルミネーションよりずっと綺麗。
毎日わたしの瞳に刻まれる、ひとつひとつの灯り。
この灯りを見ていると、自分以外の誰かが生きてる事で安心する、といつか言った。
でも光は、この灯りを見てるとまるで自分がひとりぼっちにでもなったかのような気分になると言った。
いま、まさにそんな気分だ。
冷たい夜風にあたり、携帯を取り出し、電話をかける。
ワンコールもしないうちに、その男は電話に出た。
まるで心待ちにしてたかのように、出るの早すぎ…。
「もしもし?!」
「もしもし…」
「さくらー!初めて電話かけてきてくれたね!俺すげぇ嬉しい!お前ずっと俺の電話無視してるしさぁ」
電話を掛けた相手は朝日で、この携帯に彼の番号が登録されてから初めて電話を掛けた。
すぐに出て、しかも明らかに嬉しそうな声色をあげる朝日に対して、少しの罪悪感で、胸がちくりと痛む。
「あの、プレゼント…ありがとうございます…」
「ああ!あれ見てくれた?気に入った?」
「あの…申し訳ないんですけど…あんな高価な物はやっぱり受け取れません…」
「なんだ、それ…」
「あたし、宮沢さんに何もあげてないし
だから、これはお返ししますっ!光に返しておくんで!」
「…何?お前ら今一緒にいんの?」
さっきの嬉しそうな声とは打って変わり、声に怒りが溢れてくるのがわかる。
「一緒になんていませんけど…光に会ったら渡しておきます…」



