「もらえない…!
もらえないです…!」
返そうとしても、朝日は受け取ってくれない。
というか、この人はこんな物を渡す為だけに、この寒空の下わたしを待っていたというのだろうか。全然この人の考えている事がわからない。
「…それに…あたし宮沢さんにプレゼント買ってないし…」
「いらねぇよ、お前ら貧乏人から物貰うほど困ってねぇし」
憎まれ口を叩きながら、空を仰いだ。
すぐに後ろを振り返って、「じゃあな」と言った。
手の中に納まった赤いアクセサリーケース。それだけを残したまま、街の雑踏に消えていく。
…あの人、本当にこれだけ渡しに会いにきたの?
ゆっくりとアクセサリーケースを開ける。
「……!!」
包装もされていないベロアのアクセサリーケースから出てきたものは、何個ものダイヤの粒が周りを囲む、プラチナの指輪だった。その重さに、指が震える。
こんなの貰えない!そう思って人並みの中朝日を探しても、すでに朝日の姿はなかった。
あの人の考えが全然読めなかった。その本心を掴もうとすればするほどすり抜けていく。そんな所も光に似ている。また朝日と光の共通点を見つけて、愕然としてしまった。



