【完】さつきあめ


「そんな怯えた顔すんなって」

「えっと、何ですか?用事」

「別に拉致しようとか思ってねぇから。
俺これから会議あるし」

「あ、光の言ってた」

光、という名前を出してからまずいと思った。

「相変わらず仲良しみたいだな」

馬鹿にしたかのように鼻で笑う。
コートのポケットから携帯を差し出して、わたしの方へ画面を向ける。
そこにはサンタのコスプレをしたわたしの写メがあった。
…しかもさっき不意打ちで高橋に撮られた奴だ。

「送ってって頼んでおいたんだ」

「誰に?!高橋くん?!深海さん?!
てゆーか消して!その顔すっごい嫌だ!」

朝日はわたしの言葉を無視して、画面に顔を近づけて、目の前にいるわたしと交互に見た。

「可愛いよ。白いサンタが良く似合ってる。 さくらは白が1番似合うな」

…少しでも共通点があるのが嫌なのに…。
朝日は光と同じ事を言う。

「別に……」

携帯をポケットにしまって、次に何やら取り出す。
取り出された小さな箱を、無理やりわたしの手の中に押し付ける。

「なんですか?!」

「クリスマスプレゼント…」

「え?!」

小さくクリスマスプレゼント、と言ってはにかんだ朝日は小さな子供みたいだった。