「宮沢さんのせいではない。絶対に」
それでもそこまで光は言い張った。
「止めよう。この話は」
「うん…何かごめん。光も親しくしてる人なのに…なんかあたし無神経だった…」
「夕陽が気にするような事じゃないよ」
もう光はいつもの優しい顔に戻っていた。
だからこれ以上この話は聞かない事にしようと思った。
光の見せる、戸惑い、怯える顔が嫌だったから。
何かを口にすれば、すぐに壊れてしまいそうな儚さを彼が持っているのに気づいたのもこの頃からだった。
「メリークリスマスー」
「いえーい!安井さんメリークリスマス!」
クリスマスイブ、24日。
安井と同伴。特別な日だから、と素敵なイタリアンを予約してくれた。
笑顔で笑っていても心は少し曇り空。
24日は一緒に過ごす、と約束していた光が、急遽会議になってしまったからだ。
…24日にわざわざ会議なんて。と思ったけれど、すぐに25日は大丈夫だからと光がフォローをいれてきたので、全然気にしてないそぶりをして、笑った。
クリスマスイブは恋人と過ごし、クリスマスは家族と過ごす。誰かが昔言っていた。
まぁ、25日にクリスマスを一緒に過ごす家族も近くにはいない。
そもそもうちの家族はクリスマスを祝ったりするような家系でもなかったのだけど。



