【完】さつきあめ

あ…これあの時と同じ顔だ。
初めて光の家に行った時、光にキスされて、その後光は怯えたように戸惑った顔をしていた。

「何で、さくらを、知ってる？」

「この間深海さんから聞いたんだよ？
さくらさんってナンバー１の人がいたって、わたしによく似てるって言ってた…。
深海さんも一緒に仕事がしたかったって言ってたし、小笠原さんからも指名してた女の子だって聞いた…。宮沢さんの昔の彼女だったんだよね」

「あぁ…その通りだ」

光の怯えたような顔が嫌いだった。
でもすぐにいつものような優しい笑顔に戻って安心した。

「綾乃ちゃんの親友でもあったんだね…。
なんかすごい人だね…
皆から必要とされてる感じ」

「うん。明るくて、すごく良い子だったよ」

「光も親しかったんだよね？」

「まぁ、ずっと同じ職場で働いてたからな…」

「…亡くなったんだよね？」

光の横顔が険しくなる。

「あぁ…。さくらは自殺したんだ…」

「自殺？！」

どくんどくん、と心臓の高鳴りが大きくなっていくのがわかる。
いつかの日を思い出していた。
それは恐怖だった。憎しみでもあったし、誰かへ向ける嫌悪感でもある。
波打つ感情が抑えきれなくる。


「宮沢さんのせいで？！」

「違う！！」

こんなに大きな光の声を聞いた事は今までなかった。
今までに聞いた事のないような声で、違うと否定する光の横顔が苦しそうだった。
それでもわたしには確信があった。
さくらさんが自殺した。それに直結する理由が朝日にあるということに。