「なんなのー!」
無理やり光の両頬を手で掴み、顔を上げさせると、真っ赤な顔をした光が一瞬わたしを見て、すぐに目を逸らした。
色々な表情の光を見てきたけど、こんな顔を見るのは初めてだった。
すぐにわたしの肩から顔を引き離し、大袈裟にそっぽを向く。
「光…照れてんの?」
「照れてねーよー」
「じゃー顔見せてよ!」
「やっだねー!」
じゃれあってるうちに、光はわたしをぎゅっと優しく抱きしめる。
「大切に思うから、ちゃんとしてから夕陽と付き合いたいって思ってる…。
だからお前は俺に他に女がいるとか、心変わりするかなんて心配しなくていい…」
「光…」
「綾乃の事も心配しなくていい。
前みたいに仲良くなくって心配してるかもしんねぇーけど、あいつはお前が好きなんだよ」
「ほんとに…?
あたし、絶対綾乃ちゃんに嫌われてると思った…」
「あいつは元々人と関わるのが苦手な人間なんだよな。だから誤解されがちってのもあるけど、でも夕陽の事は初めから好きだって言ってた。友達だと思ってるって。
元々双葉で働いてた頃は友達なんて全然いなくって、本人はそれでもいいって言ってたんだけど、昔そんなあいつの心を開いた女の子がいたんだ。そいつに夕陽が似てるってんで、最初は放っておけなくなったって言ってた。でも、知ってくうちに夕陽自身を好きになったって言ってた」
「あたしに似ている人って、さくらさん…?」
その名を出した瞬間
まるで時間が止まったかのように思えた。
光は抱きしめていた腕を突然引き離し、わたしに戸惑いの顔を見せた。



