「そう言えば、綾乃ちゃんは大丈夫?」
「うん。熱かなり高そうだったから、緊急行って家送って休ませた」
「ほんと?!ねぇ大丈夫なの?」
「んー、あいつ昔から体よわっちいからすぐに熱出したりすんの。でもそれ隠して無理するからなぁ~」
「綾乃ちゃんの事、よくわかってるね…」
昔から、とか、よく知ってるなんて聞いたら、やっぱり心が落ち込んでいく。
それをわかってか、光はわたしの前へ回り、両手をぎゅっと握りしめて、こちらを真剣な目で見た。
「何度も言うけど、俺と綾乃は夕陽が思ってるような関係じゃないよ。
俺が好きなのは、夕陽だけだ」
真っ直ぐに言い切るその言葉が嘘なんかじゃないってわかってるけど。
「夕陽は綾乃の事になるとすぐ不安そうな顔する。
お店でもそうだったよな」
そこまで見ていて、わかっているのなら、なんであんな事するの?なんて性格が悪い女だって思われたくなくて、言えない。
「わかってほしいから言うけど
俺にとって綾乃は、夕陽とは別の意味で大切な存在ではある…。
でも、これ以上は綾乃の名誉のために言えない」
「も、元カノとか…?」
そう聞いたらぶーっと吹き出すように大笑いした。
「ないない。絶対ないって!地球がひっくり返ってもありえないって!」
「光があたしの事を好きになることだってあたしにとっては地球がひっくり返ることくらいありえないことなんだってー!だから不安になるんじゃない…」
両手を握りしめたまま、光はわたしの肩に頭をことんと置いた。
光の匂いが途端に強く広がる。
「俺はー…
出会ってすぐくらいからお前の事好きだったんだけどなー…」
「嘘!
絶対嘘!」
「嘘じゃねぇよー…、最初は綺麗な女だなーくらいにしか思わなかったけど、どんどん綺麗になってくし、綺麗なわりには中身も純粋で優しいし、そうかと思えば根性あったりー…」
「…光、肩重い…」
「いま、顔見せたくない…」



