「うるせぇなぁ。家まで送ってくから、ちゃんと休め」
無理やり光は嫌がる綾乃を連れ出そうとした。
あっ、という瞬間、光がわたしの方を振り向く。
無言で見つめる視線は「何もない」と言っているようにも見えた。
2人の間にわたしが思ってるような事があるとしたなら、こんな目立った行動を光はとらないだろう。信じたい。わたしを好きだと言ってくれた光を。
無理やり笑顔を作って、光と綾乃を見送る事しか出来なかった。
「なんか親密って感じよねぇ~…やっぱあんた騙されてるんじゃないの?!」
待機で、はるなが物凄い剣幕で言ってきた。
わたしを不安にさせてるわけではなく、これは心配しているのだ。
近頃一緒にいることも多くなったせいか、不器用なはるななりの優しさはもうわかってるつもりだった。
「まぁさ~…綾乃はずっとこの系列にいるし、社長とも付き合いが長いからそう見えたりもするかもしれないけどぉ~!なんか事情があるんだよ…」
「あたしもそう思う…」
「あんたたちはぁ~!!
熱あるにしてもあんなに過保護に送ってく事ないでしょ~?!」
気にしてないといえば大嘘だ。
小さくて細かい事ばかり気になってる。家まで送ってって何をするんだろう、なんて想像するだけで胃がきりきりと痛む。
でも好きだと言ってくれた光が無責任な行動をとるとはどうしても思えないんだよ。



