「まぁ夕陽の好きなところにとことん付き合うつもりだよ」
「ありがとう…」
「んじゃ、なんかまぁ元気そうだから、俺家に帰ろうかなー。家って言ってもこの階下なんだけどね」
そう言って立ち上がる光の服の裾を掴む。
どれだけ一緒にいても一緒の気持ちにはならない。そんな事はわかっていたことだろう。
それでも素直な感情が言葉になって紡がれていく。
「もっと一緒にいたい…」
その言葉に光は一瞬戸惑いを見せる。
いつもそう。
わたしが光を困らせてばかりで、わたしの言葉はいつだって光を困らせることしか出来ない。
それでもこの感情を止める事が出来ない。
お酒のせいではない。すっかりと酔いは覚めていた。
そういう雰囲気だったから、お酒も入っていたから、そう言い訳をして、好きでもないのにわたしを光が抱いていたなら、今とは違った未来があったのかもしれない。けれども光はそういう人間ではない事も十分わかっていた。
わたしの好きな人は、真摯で優しくて、決して心に曇りのないような人。
「俺が夕陽を抱けば、夕陽は満たされるのかな…」
光はぼんやりとそう呟いた。
その後に真っすぐな瞳を向けた。わたしの好きな、光の決して揺るぎない強い瞳。
そしてそっとわたしの頬に触れる。熱を帯びた手のひら。
あなたを造り上げる全ての物に惹かれていた。



