トイレから出てきて顔色の悪いわたしを見て、光は心配そうに駆け寄る。
テーブルには空のジョッキが何杯も置かれており、すっかり出来上がったはるなは上機嫌で「カラオケ行こー!」と叫んでいた。

「なんかさくら具合い悪いみたい。俺も今日は疲れたから帰るよ」

「えぇー?!マジでー?!さくら具合い悪いのぉー?!カラオケ行こうよぉ!!」

そんな物はお構いなしなのはすっかり酔っぱらったはるなで、わたしの腕を掴む。美優がそれを制止するようにはるなを自分の方に引き寄せて、「うちらカラオケ行くから、社長さくらの事頼んだよ!」と言った。

美優が気を利かせてくれた事はわかったけれど、今は何よりも気持ちが悪い。
ふらふらとする足元、それを支えるように光がゆっくりと歩いてくれる。
途中のコンビニで水を買ってくれて、冷えた空気に体が触れて、さっきよりは良くなってきた。

「おいおい、大丈夫か?」

「んー…大丈夫。
何か楽しすぎて飲みすぎちゃったみたい…」

「楽しかった?」

「うん、すごく楽しかった…。
あの、わたし元々友達ってそんなにいる方じゃなかったのね、明るい性格じゃなかったし
だからシーズンズに入って美優たちと仲良くなったり、今日も光が深海さん呼んでくれて、高橋くんも来て、ああいう賑やかな感じ好きだなぁって改めて思ったよ…」

「夕陽ってやっぱり俺と正反対の人間だよな」

「そう?」

「そうやって素直に嬉しかった、とか楽しかったって言える人間を俺は尊敬するよ。
そんな夕陽といるからこそ、癒されるんだよなぁ~…

…今日、綾乃も呼べば良かったな」

光は気づいている。
確かに綾乃はわたしと争わなくはなった。
けれど出会った頃のような関係にはまだ戻れていない事。
そして、わたしが出会った頃のような関係に戻りたい事だって。