「深海も来るって~!1時間後に待ち合わせしたよ?」
今日は全店舗店休の日だ。
プライベートの全然見えない深海がまさか誘いにのるなんて思わなかったから意外だった。はるなが慌ててわたしに「化粧品貸して!」と言う。
「ほんと最悪、あたしすっぴんなのに!化粧めっちゃ時間かかるんだから!
さくら!化粧水と乳液はどこ?!」
慌てふためくはるながわたしから化粧水と乳液をひったくるように奪い、化粧を始めた。
歩いて行ける距離だからわたしは化粧はしなくていいや、と思い、1人化粧に奮闘しているはるなを尻目に、3人でリビングで話をしていた。
はるながストレートアイロンで髪をセットし終えた後、1時間がちょうど経過していた。
いつもお店で見ているはるなの姿がすっかり出来上がっていて、それを見た光が「女って怖いわ」と呟いた。
光もお酒を飲みたかったらしく、歩いて行ける距離にある大衆居酒屋に決まった。
先に深海は到着しており、日曜日なのに混雑している居酒屋で高橋と2人ビールのジョッキを手にして、わたしたちに気がついて、手を挙げた。
「何で高橋くんまでいるのよ…」
「えー?深海さんに誘われたから来てるんだけど~?
なんかさくらの奢りで飲みに行くっていうから、ごちでーす!」
「聞いてない!!」
わたしの言葉を無視するように、皆テーブルに着き、勝手にメニューを眺め始める。
「けちけちすんなって、ナンバー1キャバ嬢さんがよぉ!」
軽口を叩く高橋をきっと睨む。
はるなは深海に会えて嬉しそうだし、引っ越しも終わったし、まぁいいかと思いながら光の隣に座る。
今にして思えば、心許せる同じお店の仲間と他愛のない話をして過ぎていくそんな時間がかけがえのない物だったのだとわかるのだけど。



