笑っていたんだよ。この時までは。でも、光はこの時全部知っていた。それをわたしに伝える事もなく、笑っていた。
ワンルームの部屋の引っ越しは4人でやればあっという間に終わり、新しく光と同じマンションに荷物を運びこんだ。
思ったより荷物も少なく、1LDKの部屋はだだっ広く感じた。
必要最低限の家具と、仕事の為に揃えた洋服や靴やアクセサリー類。それはクローゼットに詰め込んで、殺風景な部屋の出来上がり。光の部屋に負けず劣らずの殺風景ぶりだった。
「今時テレビもないなんて信じらんないー!!」
片づけを終えて、はるなが嘆く。
「だってテレビ見ないし…ネットあるし」
「本当にあんたって現代っ子よね…。
まぁ部屋にほぼ荷物がないのも原始的だけど…。ほんと変な子…」
光は相当疲れたらしく、わたしのベッドに寝転んでいて、美優はベランダの窓を開けて「いー景色ぃ!」と1人ではしゃいでいる。わたしとはるなもベランダに出て、その景色を楽しんでいた。
ガス屋と電気屋さんに電話をした後は、早く終わった引っ越しとは言え陽はもう落ちようとしていた。
ベランダから見えた街はところどころで電灯が灯り始めていた。
「お腹すいたぁ~!」
「今日はありがとう!あたしが奢るから、何か食べに行こ!」
「やったぁ~!!何にする~?お酒飲みたい~!」
「あたしすっぴんだし、その辺の居酒屋にしよ」
その時光がベッドから起き上がり、「深海も誘って居酒屋行こう」と提案した。
深海は引っ越しを手伝ってないじゃないか、と言う間もなく、光は電話をかけていた。



