【完】さつきあめ

いつものようにきちんとセットされている髪形じゃなくて、ぼさぼさ。
パーカーとジーパンの緩い恰好。
それくらい疲れてるのに、約束を守って引っ越しの手伝いに来てくれる光の気持ちが嬉しかった。

「しっかし社長ってスーツじゃないとまるでオーラがないのね?」

はるなが意地悪そうに言う。
そうは言っても、はるなもはるなで仕事明けなもんだから、すっぴんにジャージ姿だった。

ベッドに寝転びながら、はるなをじろりと睨む。

「俺もはるなのすっぴんが恐ろしすぎて、今日の夢に出てきそうだ…」

「な!!
仕方がないでしょ?!昨日もアフターだったわけ!
たかが引っ越しでメイクばっちり決めてこれないわよ!」

2人のやりとりに、美優はけたけたと笑う。
美優も昨日仕事だった。
けれど午前中から始まった引っ越しなのに、メイクはばっちりだ。

「美優はまぁ化粧してるからいつも通りなわけだ。
それにさくらもすっぴんだろ?さくらはすっぴんでも十分綺麗だけど…お前…」

光のはるな弄りは止まらない。

「さっさと起き上がって、手伝いしろつってんだろ?」

はるなはあからさまに怒りの表情を浮かべ、ベッドに寝そべる光を足蹴りにし、つんと顔を背けて、段ボールに荷物をつめていく。

「昼のキャバ嬢こえーー…」

光は渋々ベッドから起き上がり、引っ越しの手伝いを始める。
そんな2人を見て、お腹を抱えながら美優と笑い合う。