「安い願いだな…」

「お金で買えない物の方がやっぱり価値があるよね」

「おっけ。クリスマス終わったら休みだろ。その時夕陽の行きたい場所に行こう」

「やったー!!」

「あ、そうだ。クリスマス前は夕陽引っ越し入ってるだろ?
俺も休みとっておいたからな」

「ありがとうございますぅー!!
これからは待ち合わせしなくても同じマンションだから楽だね~!!」

こんな恋人同士のような会話をしていても、わたしたちは決して恋人ではない。
何となく、わたしは一生光に片思いなんじゃないかなって思えてくる。
それでも、光じゃなきゃどうしても駄目で、光以外なんて欲しくはなかった。

いくらお金を積まれても決してわたしの物にはなってくれない光の心だけ、あの頃焦がれて欲しくて欲しくて仕方がなかった。

「おはようございまーす」

同伴前、いつもシーズンズに寄っていた。
それは前からの習慣でもあったけど、セット前だったり、セット後だったりはバラバラだけど、ナンバー1になった後も欠かさずにしていた、自分の中の儀式の一部のようになっていた。

必ず黒服の誰かはいて、深海も必ずいてバックでパソコンとにらめっこしながらカップラーメンを今日もすすっている。

「さくら、おはよう」

「おはよう、深海さん」

昨日までの売り上げと、今月の指名本数を細かく見て、自分の手帳と照らし合わせる。
その姿を見て、深海も高橋も揃って「真面目だなぁ」と感心していた。
ナンバー1になってから、尚更神経質になっていたと思う。
それは追いかける時よりも、追われる立場になった瞬間の方が怖かったからだ。