七色グループが派手に広告を打ってくれたお陰もあるし、ナンバー1という肩書きが更に客を呼ぶ呼び水になる。
先月の綾乃とわたしの争いがシーズンズにもたらした利益は思ってた以上に大きくて、全グループの売り上げの3番がわたしで、5番が綾乃だった。
シーズンズの女の子がトップ10内に入ったのは、この月が初めてで、それも揃って全グループ内で5位以内に入ったので、他の系列店からもシーズンズは一目置かれる存在になった。

それでもあんなに頑張っても、ゆりの売り上げの足元にも及ばなかった。

桜井は締め日以来わたしには会いに来なくなった。
わたしから切ったのだ。それは当たり前で、それでもわたしはシーズンズの看板を背負ったからにはナンバー1で居続けなければならない。
12月に入ってからも新規のお客さんを掴んで、調子は全然悪くなかった。
1人いなくなっても代わりは沢山いる。誰かが言ってた。
けれどそれはお客さんにも言える事で、たとえわたしが居なくなったとしても嬢は星の数ほど沢山いる。

「ねぇ、光」

「ん?」

「光、いつかナンバー1になったら何でも欲しい物買ってやるって言ってたよね」

「うげ、覚えてやがったか…。
まぁ約束は約束だ。鞄でも靴でも何でも買ってやるわ!あー破産するかも」

大げさに嘆く光に、小さな笑いを落とす。

「なーんでも?」

「何でもいいよ。車とかマンションとかさすがに無理は言うなよ?
今月は夕陽の方が絶対に稼いでるんだからな」

「じゃあ、光の時間を1日ちょうだいよ」

それはいつか、光と賭けをした時、光がわたしに要求したものだ。
さくらの時間をちょうだいよ。と。

白い息と共にふぅと小さなため息を吐く。
光はもう一度だけ、ビルの看板を見上げた。