VIPルームの扉が静かに開かれる。
初めて出会った時と同じように、静かに微笑む小笠原がソファーに座っていた。
すぐに深海を呼び、「ルイを」と一言だけ言った。

まるで小笠原の行動がわかっていたように、「かしこまりました。ありがとうございます」とだけ言い残し、小さい頭を下げて、VIPルームを後にした。

「小笠原さん何で…ルイって…」

シーズンズでルイは空いた事がない。誰もが飾りだと思っていた。
でも深海はまるでこうなることを予想していたかのように、驚きもしなかった。

「シャンパンのように一瞬でなくなるものじゃない。キープボトルだ。これで何回か楽しみが増える。
君はだいぶん酔っぱらってるようだね、ジュースでも飲んでおきなさい」

なおも、小笠原は優しく微笑む。
目の前で起こっている事も、小笠原がシーズンズへ戻ってきた事も全部わからなかった。

「なんで…」

「元々今日はONEではなく、シーズンズにくる予定だったんだ。
どうやらゆりはあまり君を良くは思ってないみたいだね。そして君も」

「…」

この人には全部お見通しってわけか。
運ばれてきたルイと、オレンジジュース。
動く気力も、何かをいう気力ももうなく、流されるまま、乾杯をする。